1999 年 14 巻 1 号 p. 19-23
介護者の腰痛は深刻な問題である。この腰痛を予防するために,車椅子とベッド問のトランスファー介助などを行う場合には,腰部負担が少ない膝関節屈曲姿勢が指導される。しかし,実際の介護場面では膝関節伸展姿勢が多く用いられている。そこで我々は,膝関節屈曲姿勢と伸展姿勢で,トランスファー介助動作をモデル化したリフティング動作を行い,重量と重量の移動角度を変化させた場合の主観的な負担度および体幹と下肢の回旋動作の相違を検討した。その結果,主観的な負担度は膝関節屈曲姿勢で高くなることが認められた。また,膝関節屈曲姿勢では下肢に比べ体幹の回旋角度の割合が大きく,現在良好とされている膝関節屈曲姿勢が必ずしも良好なトランスファー介助姿勢とはいえない可能性が示された。