陸水学雑誌
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特集:釧路湿原達古武沼の自然再生に向けて
達古武川上流部湿地帯における水質環境特性
三上 英敏石川 靖上野 洋一
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2007 年 68 巻 1 号 p. 65-80

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抄録
 本研究では,富栄養化が進行している釧路湿原達古武沼の流域において,湿地帯からの栄養塩負荷について解明するため,人為影響の無い達古武川上流部の湿地帯にて調査を行い,その水質環境特性について検討を行った。調査した湿地帯の涵養水には,腐植物質に代表される溶存有機炭素(DOC)濃度の高低に係わらず,高濃度の溶存無機態リン(DIP, 0.14~0.38 mg L-1)が存在しており,河川への強いリンの供給源となっていた。それは,湿地帯を涵養している還元的な湧水からの供給が大きいことと,Feの還元溶解など,湿地帯の環境特性と密接に連動していると思われた。湿地内涵養水の溶存態窒素は,そのほとんどが有機態であり,DOCと溶存有機態窒素(DON)濃度の間には正の相関があった。また,その湿地帯からの溶存無機態窒素及びリン負荷のN/P比は0.4以下と低く,それは達古武沼のDIPが通年で枯渇しない理由の一つと思われた。さらに,その湿地帯からは懸濁態としての窒素やリンの負荷量も大きかった。それは,湿地帯土壌の有機物や窒素及びリン含量が大きいことと,涵養水の弱い流れによって土壌粒子の一部が容易に輸送され河川へと供給されるためと考えられた。
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© 2007 日本陸水学会
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