奄美大島を流れる河川には絶滅が危惧されるリュウキュウアユ(Plecoglossus altivelis ryukyuensis)が生息している。本研究では,島内外の住民を対象にアンケート調査を行い,仮想評価法を用いてリュウキュウアユに対して人々が持つ価値を評価した。リュウキュウアユに対する価値は,絶滅を防ぐための費用として支払ってもよいと考える寄付金額により評価し,評価価値と関連する個人の属性をステップワイズ回帰分析により抽出した。その結果,島内では,リュウキュウアユのいる自然環境が子どもの教育に役立っていると考えている人ほど高い価値を感じ,水害を経験した人は価値を低く感じることが分かった。また,島外(鹿児島県および東京都)では,自然保護に関心を持ち,自然の中で余暇を過ごすことを楽しみに感じ,奄美大島を訪れたことのある人がリュウキュウアユの価値を高く評価していた。島内においてリュウキュウアユを保護する機運を高めるためには,水害対策を講ずると共に,奄美大島の自然を生かした教育活動を実施することが重要と考えられる。