Corbiculaシジミ属は,貝殻の形態や色彩の個体差が大きく,種分類が混乱している。日本を除くアジアの大陸在来種であるタイワンシジミ
C.
flumineaは,異なる2形態型-殻内面が白色で側歯が紫色の形態型および殻内面が濃紫色の形態型-を呈し,後者は日本の在来種であるマシジミ
C.
leanaとの形態識別が困難である。1987年には国内では初めて岡山県倉敷市内で前者の形態型の
C.
flumineaが報告されたが,同地域では最近
C.
leanaと形態的に酷似した個体が増加している。本研究では,2008年9月に倉敷市内の高梁川下流域から
C.
leana様個体や殻内面が白色の
C.
fluminea形態型を含む淡水性シジミを採集し,それらの種を分子分類法により遺伝的に同定した。ミトコンドリアDNAの16SリボゾームRNA遺伝子の塩基配列を解読した結果,多様な貝殻形態であるにも拘わらず2種類のハプロタイプしか得られなかった。さらに,多重整列解析および近隣結合系統樹から,両ハプロタイプは
C.
flumineaであると同定された。以上の結果より,少なくとも1987年以降には
C.
flumineaの異なる2形態型が倉敷市内の高梁川水系に移入していることが明らかとなった。
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