抄録
長野県において,小河川に形成されたワンド・タマリの魚類群集を調査したところ,合計で 12種の魚類が採捕された。本流の魚類と比べると,ドジョウとシマドジョウが多く,ウグイとオイカワが少なかった。ワンド・タマリでは,魚類の種数や個体密度は主な餌となる底生動物の豊富さとは相関しなかったが,物理化学的環境要因と強く相関した。魚類の種数は,6月にはワンド・タマリの溶存酸素飽和度が高い場合に,9月にはワンド・タマリの面積や水深が大きい場合に多かった。魚類の全個体密度は,9月にはどの環境要因とも相関しなかったが,6月にはワンド・タマリの流速が大きいほど高かった。ワンド・タマリにおいて,魚類はユスリカ科及びカゲロウ目の幼虫と底生藻類及びデトリタスを主に摂食していた。本流と比べると,魚類の食性に占めるデトリタスの割合が高かった。