2014 年 76 巻 2 号 p. 99-109
諏訪湖では各種の富栄養化防止対策が進展し,リン・窒素の外部負荷が減少している。その結果,湖内に発生する植物プランクトンの組成も変動し1999年からは藍藻類の減少が見られている。その後2011年には, Mougeotia属が8月から12月にかけて出現した。
諏訪湖から分離したMougeotia属を核 DNA 18S rRNA解析した結果,遺伝的に異なる二つの系統群(塩基配列は約4%(p-distance)異なる)が存在することが明らかになった。これらの系統群は塩基配列の違いから別種と考えられる。諏訪湖の系統群は, M. scalarisのグループとも異なり,諏訪湖と琵琶湖より分離した複数株が同じ系統群であることを始めて明らかにした。
2012年1月のMougeotia属細胞長は2011年より長く, 接合胞子形態から判断してM. elegantulaであると思われる。
一般にMougeotia属は貧栄養から中栄養湖に存在し, 諏訪湖では1960年代にも出現が記載されている。2011年のMougeotia属の出現は,現在の諏訪湖が水質改善の結果,藍藻優占の富栄養湖から中栄養湖への移行過程にあることを示唆している。