陸水学雑誌
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76 巻, 2 号
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原著
  • 二木 功子, 斎藤 梨絵, 中村 剛也, 宮原 裕一, 東城 幸冶, 花里 孝幸, 朴 虎東
    2014 年76 巻2 号 p. 99-109
    発行日: 2014/09/05
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     諏訪湖では各種の富栄養化防止対策が進展し,リン・窒素の外部負荷が減少している。その結果,湖内に発生する植物プランクトンの組成も変動し1999年からは藍藻類の減少が見られている。その後2011年には, Mougeotia属が8月から12月にかけて出現した。
     諏訪湖から分離したMougeotia属を核 DNA 18S rRNA解析した結果,遺伝的に異なる二つの系統群(塩基配列は約4%(p-distance)異なる)が存在することが明らかになった。これらの系統群は塩基配列の違いから別種と考えられる。諏訪湖の系統群は, M. scalarisのグループとも異なり,諏訪湖と琵琶湖より分離した複数株が同じ系統群であることを始めて明らかにした。
     2012年1月のMougeotia属細胞長は2011年より長く, 接合胞子形態から判断してM. elegantulaであると思われる。
     一般にMougeotia属は貧栄養から中栄養湖に存在し, 諏訪湖では1960年代にも出現が記載されている。2011年のMougeotia属の出現は,現在の諏訪湖が水質改善の結果,藍藻優占の富栄養湖から中栄養湖への移行過程にあることを示唆している。
  • 香川 尚徳, 広谷 博史, 森 雅佳
    2014 年76 巻2 号 p. 111-127
    発行日: 2014/11/14
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     単循環湖の石手川ダム湖で,夏季のクロロフィルa濃度(Chl-a)が年々減少する原因を検討した。1983年1月から20年間,毎月1度,湖内定点の水深0.5 mで,水温,pHと,Chl-a,栄養塩類の濃度を調査した。その結果,試料がpH で2群に分かれること,pH ≤ 8.10の試料群でpHが経年的に上昇する一方,pH > 8.10の試料群で下降することが認められた。pH ≤ 8.10は主として循環期(10 – 3月)に,pH > 8.10は主として成層期(4 – 9月)に見られた。次に,1993年2月からの10年間に得た溶存無機態炭素濃度とpH,水温,主要イオン濃度とから,炭酸の解離平衡式を用いて,遊離CO2濃度を計算した。遊離CO2と平衡になるCO2ガスの分圧の対数とpH が高い負の相関を示すこと,pH 8.1で遊離CO2が大気中のCO2と平衡になることが認められた。全体を通して見ると,成層期の試料群では,先行する循環期の遊離CO2が年々減少することを反映して,Chl-aが経年的減少傾向を示した。高pH(> 8.10)で部分的に炭素制限が生じたと推定された。なお,湖内上流に流入河川水を制御するフェンスが設置された時期には,フェンス下流で炭素制限が強化されたと見られた。
  • 菊池 智子, 大高 明史
    2014 年76 巻2 号 p. 129-138
    発行日: 2014/11/19
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     ワカサギ杯頭条虫Proteocephalus tetrastomus (条虫綱変頭目杯頭条虫科)の分布と生活史を明らかにするために,日本各地のワカサギで寄生状況を調査するとともに,青森県小川原湖のワカサギで条虫の寄生率と発育ステージの季節変化を調べた。ワカサギ杯頭条虫は,調査した34の湖沼のうち19湖沼のワカサギで確認された。条虫の分布には地理的な偏りは見られず,湖沼の塩分特性や栄養状態との関連性もなかった。条虫の寄生数とワカサギの肥満度との間には,どの湖沼でも有意な負の関係は見られなかった。
     小川原湖のワカサギに見られるワカサギ杯頭条虫は,春から夏に向かって体長が増加するとともに成熟が進行した。感染可能な幼虫を持った成熟個体は夏期を中心にして6月から12月まで見られた。一方,小型の若虫は7月に現れ,その割合は秋から冬に高まった。こうした季節変化から,ワカサギ杯頭条虫の生活史は一年を基本とし,夏から秋に世代交代が起こると推測された。
短報
  • 神谷 宏, 管原 庄吾, 嵯峨 友樹, 佐藤 紗知子, 野尻 由香里, 岸 真司, 藤原 敦夫, 神門 利之
    2014 年76 巻2 号 p. 139-148
    発行日: 2014/09/04
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     浅い汽水湖沼である宍道湖において,19年間の水・塩分・リン収支を計算した。19年間の年間平均淡水流入量は1.25~2.35×109m3で,平均は1.77×109m3であった。下流に位置する中海からの逆流量は0.32~0.84×109m3で,平均が0.49×109m3となり,淡水流入量の27.7%に相当した。淡水流入量と中海からの逆流量を考慮した滞留日数は47.5~76.2日,平均で59.4日であった。年間TP流入量に対して沈降する割合は-23.6%~69.3%の範囲にあり,宍道湖においては年間に流入するTP負荷の20.9%が宍道湖湖底に堆積していることが明らかとなった。また,年間TP流入量と沈降率とは正の関係(r=0.71)があり,流入量の少ない渇水年は沈降量が少なかった。
     8~9月ごろに溶出によりピークを迎えたTP濃度は11~12月にはほぼ平常値となる。TP現存量のピークから平常値となる間の宍道湖への流入負荷量,宍道湖から流出する水量及びTP濃度を用いて,溶出したリンが再度湖底へ堆積する割合を計算した。TPの沈降割合は8.8~65.6%の範囲にあり,平均で溶出したリンの45.1%が再度湖底に沈降し,翌年以降の溶出に関与すると考えられた。
     リン濃度が減少する過程において,SRPは大きく減少したが,PPの変化はほとんど見られなかったことと,リンの減少と同時に堆積物直上のDOが増加していることから,リンの減少は嫌気化に伴って溶出したSRPが堆積物表面の好気化により直接吸着された結果と考えられた。この時堆積物はSRPを放出した後であるためリンの欠乏状態であり,容易にSRPを吸着するものと考えられた。
  • 千賀 有希子, 山内 翔平
    2014 年76 巻2 号 p. 149-158
    発行日: 2014/09/21
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     谷津干潟における水生植物ヨシ(Phragmites australis)の葉,茎,地下茎および穂の各器官における窒素とリンの蓄積量を2013年6月~2014年1月の間,月に1回測定した。全長,茎と地下茎の周囲長,バイオマスの増加から,ヨシは10月まで生長したことが示された。11月以降,ヨシは枯死し始め,バイオマスの減少がみられた。葉および茎の窒素とリンの蓄積量は,8月~10月で高かった。地下茎(地表から約10 cm)における窒素とリンの蓄積量は,観測期間を通して葉および茎と比べると非常に低かった。地上部である葉,茎および穂の窒素とリン蓄積量の合計は,本研究で採取したヨシ体全体の90%以上であった。
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