陸水学雑誌
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イシガイ科淡水二枚貝の成貝6種と幼生2種の塩分耐性
伊藤 寿茂柿野 亘北野 忠河野 裕美
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2016 年 78 巻 1 号 p. 87-96

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抄録

 イシガイ科の淡水二枚貝6種(ヨコハマシジラガイInversiunio jokohamensis,イケチョウガイHyriopsis schlegeli,マツカサガイPronodularia japanensis,カラスガイCristaria plicata,ドブガイモドキCristaria tenuis,ドブガイ類Sinanodonta sp.)の塩分耐性を実験水槽内で調べた。
 まず,各種成貝の塩分耐性を判断するために,様々な塩分に調整した水槽に各種成貝を種別に収容して,経時的に生残率を記録した。様々な塩分に保った飼育水にヨコハマシジラガイの成貝を収容したところ,6 psu以上の環境下では全ての個体が斃死した。低い塩分(3~6 psu)の飼育水に各種成貝を収容してから,徐々に塩分を上昇させたところ,6~8 psuの時点でヨコハマシジラガイとイケチョウガイ,ドブガイモドキ,ドブガイ類は,ほとんど全ての個体が斃死した。生存個体のあったマツカサガイとカラスガイは,さらに塩分を10 psuまで上昇させたところ,全ての個体が斃死した。
 次に,幼生の塩分耐性を判断するために,カラスガイとドブガイモドキの幼生を寄生させた宿主魚類を水槽内で継続飼育し,魚体からの幼生と稚貝の出現状況を確認した。魚体に寄生した幼生が稚貝へと変態する期間(186~236時間)より前に,飼育水の塩分を0~3 psuから11~33 psuまで上昇させて再び0 psuまで下げる操作を行ったところ,全ての実験区で変態を完了した稚貝が生きた状態で出現した。
 イシガイ類の成貝は6~8 psu以上の塩水中で生残することが出来なくなるが,幼生は宿主に寄生中であれば,11~33 psuの塩水にさらされても生存し続けることが示された。イシガイ類は幼生期に汽水域や海域を介して分散する可能性がある。

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© 2017, The Japanese Society of Limnology
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