2025 年 86 巻 1 号 p. 19-35
アルカリホスファターゼ(AP)は溶存態の有機リンを無機化する主要な酵素である。長野県の諏訪湖ではここ40年で生物が直接利用できる水中の無機リン濃度が85%減少し,生物にとってAPを介した有機リンの利用が重要になっている可能性が高い。しかし,諏訪湖におけるAPの研究事例は乏しい。そこで,本研究では諏訪湖におけるAPを介した有機リンの動態を解明するために,諏訪湖をはじめとする4水域でAPの活性値(APA)をAPの生産者別に分け測定と解析を行った。
諏訪湖では有光層・無光層に共通してAPの大部分は植物プランクトン由来で,有機リンの無機化には植物プランクトン由来のAPが大きく関与していた。APA/Chl-aの比を用いた解析から,有光層の植物プランクトンのAPの生産は水中の懸濁態リン濃度によって制御されていることが示唆された。無光層には有光層から植物プランクトンと共にAPが沈降しており,無光層における有機リンの無機化には有光層から供給されたAPも関与している可能性が示された。また,バクテリアは炭素獲得のためにAPを生産した結果,無機リンを植物プランクトンへ供給している可能性も示された。