陸水学雑誌
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下水処理を維持用水とする小川の付着藻類と底生動物に及ぼす残留塩素の影響
福嶋 悟金田 彰二
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1999 年 60 巻 4 号 p. 569-583

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抄録
塩素消毒された下水処理水で維持されている小川では,全残留塩素(TRC)濃度が高い放流点付近で,付着藻類および底生動物の現存量は少ないのに対して,下流側では増加する傾向が観察された。TRC濃度が低くなる最下流地点で付着藻類現存量が再び減少したのは,底生動物による摂食のためと考えられた。付着藻類と底生動物群集の種類数は下流側で増加したが,TRC濃度が0.1mgl-1以下の時にその傾向は顕著であった。藻類群集では緑藻類のChoricystis chodatii(JAAG) FOTT,底生動物群集ではChironomus yoshimatsui MARTIN et SUBLETTEあるいはTubificidae gen. spp.が全地点で優占的であった。
人工基物を用いた現場実験では,塩素消毒された下水処理水で維持されている小川における藻類増殖量は対照地点に比べて少なかった。対照地点の人工基物を小川に移動すると,人工基物上の藻類群集は珪藻類の優占する群集から,2種類の緑藻類で構成される構造に変化した。
塩素消毒された下水処理水で維持されている小川で生育した藻類を1.0,2.0,4.1TRCmg1-1の3濃度段階に24時間暴露した室内実験では,現存量は対照(次亜塩素酸ナトリウム無添加)と有意な差はなかった。それに対して,対照地点で生育した藻類の現存量は全濃度段階で対照と有意差(P<0.01)が認められた。また,C.yoshimatsuiを用いて同様の実験を行った場合,4,1TRCmgl-1の死亡率が共に高かったが,小川に生息していたものの死亡率は対照と有意な差はなく,対照地点に生息していたものでは有意差(P<0.01)が示された。
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