陸水学雑誌
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秋田県雄物川扇状地の湧水流におけるババホタルトビケラの生活史
青谷 晃吉野崎 隆夫
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2001 年 62 巻 1 号 p. 23-39

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抄録

秋田県雄物川扇状地において,小さな湧水流に生息する携巣性のババホタルトビケラNothopsyche babai Kobayashiの生活史について調査した。この種は,晩秋に羽化期を持つ年1世代である。初冬から初春にかけて孵化した幼虫は,水底の落ち葉や礫の表面に付着する藻類を摂食し,春から夏にかけ急速に成長したのち,終齢幼虫が成熟すると水中で発育を休止し岸際のコケの下や高等植物の根際で夏眠する。その後,周年的に起こる秋の水位低下によって陸上になった場所で蛹化し,羽化する。若齢幼虫の発育に大きなばらつきが見られるものの,蛹化や羽化は短期間に集中している。また,夏眠する際,近縁種のように積極的に陸上に移動しない。調査した2地点間で,4・5齢幼虫の個体サイズに有意差がみられる。これら,生活史の時間的場所的変異とその意義について,環境条件などと関連させ,議論した。

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