愛媛県下を流れる石手川上流部では,出水時を除いて取水堰で河川水が全て取り去られており,堰の下流では地下水の湧き出しによって河川が再生している。この堰下流で,河川の水質を制御する環境要因を検討するために,堰の下流2.4km地点で1992年1月から1997年12月まで毎月1回10時から14時までの間に水質調査を行った。平水時の51試料について因子分析を行った結果,河川水中の溶存物質は主として4つの因子によって制御されていた。第1因子は全変動の22.4%を説明しており,Ca
2+及びMg
2+の濃度とC
B-C
A,すなわち強塩基イオン濃度の和から強酸イオン濃度の和を減じた値(HCO
3-濃度の指標)と正の相関を持った。第1因子の因子得点は流量と負の関係を示し(γ=-0.618,p<0.001),Ca
2+及びMg
2+の濃度は流量によって制御されていた。第2因子はC
B-C
A,Na
+濃度,K
+濃度と正の相関を持ち,全変動の17.4%,第3因子はSO
42-及びCl
-の濃度と正の相関を持ち,全変動の15.4%,そして第4因子はpHと正,NO
3-濃度と負の相関を持ち,全変動の13.3%を説明した。
次に,Ca
2+とMg
2+の挙動の差異について重回帰分析で検討した結果,両イオンの濃度がともに流量と負の相関を持つとともに,水温がCa
2+濃度に対して正にMg
2+濃度に対して負に作用し,結果として,Ca/Mg比が水温と正の関係を持つことが認められた。
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