抄録
教室では過去8年間に, 7例の先天性胆管拡張症を経験しているが,そのうち成人例は5例であり,かつそのうち1例に胆管癌の合併がみられた.そこで,我々は胆管癌を合併した本自験例を報告するとともに,先天性胆管拡張症に胆管癌を合併した症例の本邦報告例について,若干の文献的考察を行った.
症例は38歳の主婦で,上腹部痛・発熱・黄疸を主訴として来院した. ERCPおよびPTCにて,肝内胆管の著明な嚢腫状拡張と総胆管の壁不整および狭窄像を認めた. PTCドレナージよりの胆汁細胞診にて異型細胞を認めた.以上より先天性胆管拡張症V型(肝内胆管嚢腫)に胆管癌が合併したものと診断し開腹術を施行した.
肝十二指腸靱帯内のリンパ節の術中迅速標本にて,高分化型腺癌の診断をえ,膵頭十二指腸切除術を行い,総肝管を肝門部にて結紮し,左肝内胆管と空腸をLongmireの術式に従い再建した.
我々が文献上確認しえた本邦における総胆管拡張症の癌合併例の報告は26例で,癌合併が発見された年齢は最小15歳,最高68歳であり,男性4例,女性21例であった.
組織学的には腺癌が圧倒的に多く,発癌の機序については確定した説はないが,胆汁うっ滞や慢性炎症はその要因にあげられる.術式に関しては,嚢腫切除兼肝管空腸吻合術(Roux-Y)が理想的であると思われる.