抄録
悪性リンパ腫に対する外科の役割はHodgkin病を中心とした研究の,急速な進歩とともに変化してきた.すなわち,従来は診断と治療の2面を持っていたが,最近はむしろ, 1971年Ann Arbor会議において,その病理学的病期による,より正しい病期の必要性をうち出されていらい,病理学的病期を決定するための開腹手術(Staging laparotomy)に対する比重が大きくなってきた.
一方,このStaging laparotomyを余儀なくさせる最大の因子は,後腹膜リンパ節に対するリンパ系造影の読影の問題である.一般にリンパ系造影における悪性リンパ腫の所見は,粗大顆粒型,横縞状型,内部欠損型,泡沫型などがあげられているが,それらの確実性について述べた文献は,著者が調べ得た範囲ではみあたらなかった.
そこで著者は, 1973年より1978年までに当教室へ受診した悪性リンパ腫26例に対して,一定の適応規準を設け, Hodgkin病7例, non-Hodgkin's lymphoma 7例,計14例にStaging laparotomyを施行し, clinical stageとpathological stageを対比し正確なstageの決定に努めるとともに,後腹膜リンパ節110個について病理組織学的に病変の有無を検索し,それとリンパ系造影所見上,病変の有無判断の規準となっているリンパ節の大きさ,辺縁の状態,内部構造の3所見を中心に対比した.その結果,内部構造の所見のうち,粗大顆粒型,網状型,横縞状型,内部欠損型リンパ節は確実に病変陽性であり,均等型,微細顆粒型,泡沫均等型リンパ節は確実に病変陰性であった.しかし,大きさ,辺縁の状態は必ずしも病変の有無を示さず参考所見にとどめるべきものであることを知った.以上のリンパ系造影における悪性リンパ腫の所見に,検討を加えたが,この成績により,今後リンパ系造影の読影能力の向上, Staging laparotomyの適応症例の選択に有効な指針となることが期待される.