日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
遺伝性球状赤血球症に合併した胆石症の1手術治験例
大藪 久則千原 久幸山崎 良定米田 紘造本田 雅之
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 40 巻 1 号 p. 115-119

詳細
抄録

最近我々は遺伝性球状赤血球症に胆石を合併した症例に対し,輸血を行いつつ,脾臓と胆嚢を同時に剔出し,良好な成績を得たのでここに報告する.
患者は45歳女性で,右季肋部痛と黄疸を主訴として来院した.入院精査の結果,黄疸,脾腫,貧血,赤血球直径の減少,赤血球抵抗の減弱,クームステスト陰性等を認め,さらに赤血球像で多数の球状赤血球を認めたので遺伝性球状赤血球症と診断した.一方胆道造影にて胆嚢内,総胆管内結石を認めている.術前3日間に1,200mlの輸血をし,脾臓,胆嚢同時剔出術を施行し,総胆管結石剔出後, Tチューブ挿入し,手術終了した.術後遺残結石を認めたのでTチューブより剔出した.術後経過良好で1年後, 2年後, 3年後の血液検査では,赤血球抵抗の減弱はなお残存するも,貧血は著明に改善され,元気に日常生活を送っている.
また遺伝性球状赤血球症の診断基準,治療方法,胆石合併,至適手術時期,最近十年間の本邦における本疾患の手術症例及び胆石合併率,輸血に関する諸問題,先天異常等に関して文献的に考察を加えた.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top