日本臨床外科医学会雑誌
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胃空腸瘻を形成した進行性胃癌の1例
東海林 茂樹添野 武彦江口 季夫佐藤 真山口 俊晴高橋 俊雄
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1980 年 41 巻 3 号 p. 465-468

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抄録

いわゆるspontaneous gastrojejunostomyは極めてまれで国内外を含め僅か11例を数えるにすぎず,殊に胃癌での報告はHornerの1例のみで本邦には報告例がない.我々は胃癌の進行に伴い胃空腸瘻を形成した手術症例を経験したので報告する.患者は61歳女性.昭和53年4月嘔気嘔吐あり,腹部腫瘤に気付き,同年7月14日入院.臍部に手拳大の腫瘤を触れる.表面凹凸不整,弾力硬,辺縁は不明瞭,移動性はなく,圧痛なし,胃透視では,まず胃体下部大弯側より空腸が造影され,ついで幽門部,十二指腸球部が造影された.胃ファイバースコープにても胃体下部大弯にBorrmann III型の癌があり,空腸に穿通しファイバーはこの孔を通じて容易に空腸に挿入し得た.この他,消化管の交通は認めない.昭和53年8月16日開腹術施行,癌は胃体部よりTreitzの10cm肛門側空腸に浸潤穿孔していた.胃亜全摘と,この穿通した空腸を前後5cm部分切除した.患者は手術時既に腹膜播種あり,一時軽快するも術後30病日鬼籍に入った.
本症例の胃空腸瘻の成因に関しては内臓下垂症の胃体部前壁に発生した癌が,まず腹壁に浸潤癒着して発育したのち,大網空腸へ進展し横行結腸の前面を通り空腸へ浸潤癒着して穿通をきたしたものと考えられた.

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