日本臨床外科医学会雑誌
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ERCPにより発見しえた胆道奇形の3例
副肝管並びに肝管合流異常について
廣田 耕二勝見 正治浦 伸三青木 洋三殿田 重彦山口 敏朗尾野 光市宇都宮 晴久
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1980 年 41 巻 3 号 p. 482-486

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抄録

私達は比較的めずらしい左右肝管分枝異常例・左副肝管例・右副肝管例の3例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.
症例1は27歳女性で右季肋部痛を主訴として来院した.結膜に軽度黄疸あり,血液検査で,総ビリルビン・GOT・GPT・Al-pの上昇が認められ, ERCPにて左右肝管の分枝異常と胆石症が確認され,手術を施行した.左右肝管の低位合流がPars Pancreatica部まで認められ結石も存在したため,胆嚢摘出とT-tube挿入を行なった.
症例2は29歳女性で,主訴は右季肋部痛であった.結膜黄染が認められ,総ビリルビン・GOT・GPT・Al-p・アミラーゼ等の高値が認められ, ERCPを施行したところ,左副肝管が認められた.他に結石像等異常がなかったため,保存的療法を行い症状は改善した.
症例3は46歳男性で,心窩部痛を主訴とし来院した.肝機能は異常なく血中アミラーゼ843 Somogyi単位を示し急性膵炎の診断のもとに治療中であった.臨床症状改善後ERCPを施行したところ,右副肝管が認められた.膵尾部には軽度の膵管狭小化が存在し,膵炎によるものと判断した.
これら胆道系の異常はめずらしいもので,特に左右肝管分枝異常と左副肝管の報告は数少ない.術前にこれらの異常を知っておくことは手術に際して大きな力となり,胆道系の損傷予防にも役立つものと考え, ERCPの重要性を痛感した.

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