1980 年 41 巻 3 号 p. 487-494
肝門部胆管癌に対し,肝拡大右葉切除を行ない,左肝管十二指腸吻合により再建し, 1年6カ月後健在である症例を報告するとともに,自験例14例の臨床像を検討し,幾つかの問題点をとりあげ,文献的考察を加えた.
保存的治療では長期生存は期待できず,試験開腹(3例)では平均1.3カ月,減黄術のみ(10例)では平均6.9カ月で全例死亡している.ただし,ループ式胆管外瘻と放射線治療の組み合わせで1年生存例が3例あり,保存的治療の中では比較的良い方法であろうと考えている.一方,根治的切除は自験例でも,文献的にも予後良好である.
自験例を進行度別に分類すると,肝切除や血行再建が理想的に行なわれれば切除可能と考えられる症例が半数以上(14例中9例)であった.従って,安全な術式の完成とともに, PTCDやSoupault drainageなどの減黄術を含めた術前管理が肝要であろう.
胆管切除後の胆道再建法はRoux-Y式肝管空腸吻合が常識的であるが,われわれは肝管十二指腸吻合を試み何ら不都合をみなかった.しかし,上行感染の問題もあり,長期の経過観察が必要である.