日本臨床外科医学会雑誌
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傍十二指腸ヘルニアの3例-本邦報告例の検討-
冨岡 勉岡 進織部 孝史山本 賢輔角田 司吉野 尞三原田 昇伊藤 俊哉土屋 凉一
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1983 年 44 巻 8 号 p. 1077-1082

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抄録
傍十二指腸ヘルニアは比較的希な疾患である.当教室で昭和44年より経験した傍十二指腸ヘルニアは3例であった.いずれも術前にイレウス症状を呈し,手術にて診断がなされた.これら3例と本邦報告例を合せた45例の検討を行った.
平均年齢は28.8歳,男女比はほぼ3:1で男性に多くみられた.症状としては腹痛・嘔吐などのイレウス症状を示す.また慢性の便秘,下痢などの胃腸症状を認める場合が多く,腹部に柔らかい腫瘤を触知する場合がある.術前に診断をつけることは難しく,術前に診断した例は3例であった.検査の主体は単純及び胃腸透視によるレ線診断であるが,これらの手段によっても診断のつかない場合が多い.嵌入臓器としては空腸・回腸の大部分がヘルニア嚢の中に嵌入している場合と,空腸又は回腸の一部が嵌入している場合とがある.希に結腸の一部が嵌入する場合がある.したがって手術としては,ヘルニァ嚢の切開,嵌入臓器の整復,壊死腸管が存在すれば腸切除術が行われる.予後は比較的良好で, 1968年以降の報告例には死亡例はみられない.
本症の発生機序としては先天的形成説と後天的形成説とがある.嵌入臓器の種類や長さから考えて,ヘルニア嚢の中に小腸の大部分が嵌入している例の多くは先天的に形成されており,小腸のごく一部がヘルニア孔の中に嵌入している例の多くは後天的に形成されたものと考えられた.
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