抄録
肝嚢胞腺癌(Biliary Cystadenocarcinoma)は極めて稀な疾患であり,術前診断に難渋する疾患の1つである.症例は79歳の女性,右上腹部腫瘤を主訴に入院.精査にて単純性肝嚢胞と診断し,全身状態から開窓術のみに終った.病理組織診断は肝嚢胞腺腫で再発・癌化を考慮し,経過観察中の1年8ヵ月後に腹部腫瘤を再び認め, CT-scan・血管造影検査などから再発癌化,すなわち肝嚢胞腺癌と診断した.再開腹時に表面凹凸不整な肝左葉腫瘤と,一塊となった小・大網と腹膜・腸間膜への播種性転移が認められ,腫瘤核出術および小・大網切除術を施行するという興味深い経過をたどった.
文献的に集計し得た本邦報告例は自験例も含めて27例と極めて稀な疾患であり,かつ,術前診断に難渋することから,本邦例を集計し,詳細に亘る検討を加え報告する.