日本臨床外科医学会雑誌
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46 巻, 10 号
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  • 加辺 純雄, 玉熊 正悦, 三村 一夫, 平出 星夫, 望月 英隆, 田巻 国義, 黒川 胤臣, 門田 俊夫, 初瀬 一夫, 河野 道弘, ...
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1243-1247
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術中において胃癌取扱規約によるS3判定の基礎データを得る目的で, 101例のS3胃癌症例とくにsi, sei 27例とSS以下12例を中心に,臨床病理学的検討をおこない以下の結果を得た.
    1) 切除67例中正診のsi, seiは27例(40.3%), 過大判定であるSS以下は12例(17.9%)であった. 2) AMC占居部位による浸潤臓器に差があった. 3) stage IVの他因子との併存個数は治癒切除0, 非治癒切除0か1, 非切除2か3因子が多かった. 4) 併存しやすい因子はP, N, Hの順であった. 5) 後壁以外から発生した癌の膵への浸潤は過大判定されやすかった. 6) 肉眼型で浸潤型は正診されやすかった. 7) 占居部位では後壁原発が正診されやすかった. 8) 組織型では分化型が過大判定をしやすく,未分化型は正診しやすかった. 9) 間質量で硬性型は正診しやすかった. 10) リンパ管侵襲ly3は正診されやすかった.
    以上同じS3の中にも正診されやすい例と過大判定されやすい例が存在し,浸潤型,後壁,未分化型,硬性, ly3は正診されやすく,後壁以外から発生した癌の膵への肉眼的浸潤,分化型は過大判定されやすかった.硬性型とly3を除く他の因子は,術前検査と術中所見より入手でき,切除範囲の決定に有用である.
  • 永澤 康滋, 小林 一雄, 加藤 延, 塩野 則次, 鈴木 直人, 加藤 信秀, 花輪 茂樹, 吉雄 敏文
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1248-1254
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    教室の1975年から1982年までの他臓器浸潤を伴うS3胃癌症例は75例であった.同時期の胃癌症例は387例であり, S3胃癌は19.3%であった.これら症例を非切除41例(54.7%)と切除34例(45.3%)に分け,その実態を調べ,手術適応と予後について検討した.非切除例の占居部位はAが21例(51.2%), Cが12例(29.3%), Mが8例(19.5%)で,浸潤臓器は膵の関係している例が25例(61%)を占めていた. P, H, Nの関係はP0H0, P1H0が14例(34.1%), P2H0, P3H0が14例(34.1%), P0H3が2例であった. 1年以上生存した症例は胃空腸吻合1例,単開腹4例計5例(12.9%)で最長生存例は1年9ヵ月であった.切除例の占居部位はCが7例(20.6%), Mが14例(41.2%), Aが13例(38.2%)であった.浸潤臓器は膵の関係しているものが19例(55.9%), 横行結腸および間膜が12例(35.3%), 肝浸潤は2例(5.9%)であった,手術は胃全摘術10例(29.4%), 胃亜全摘術17例(50%), 胃切除6例(17.6%), Child氏変法1例(2.9%)であり,合併切除臓器は1臓器が9例(26.5%), 2臓器が7例(20.6%)であった. P, H, Nと1年以上生存した例の関係は33例について検討した. 1年以上は18例(54.5%)で, P0H0は6例(18.2%), P1H0は8例(24.2%), P1H1とP1H2は各1例, P2H0は2例(6.1%)であった. 2年以上の生存例は8例(24.2%)であるが, 5年以上の生存例は4例(12.1%)であり, P0H0, P1H0, nはn0~n2であった. N=nであった例は7例(20.6%)であり診断の困難さを感じさせた.合併切除例には長期の生存例があり,条件が許せば臓器合併切除を施行すべきであり,同時にリンパ節の広い範囲の郭清も可能となるものと考える.
  • 特に胃癌および大腸癌症例について
    成広 朗, 三村 久, 高倉 範尚, 浜崎 啓介, 金 仁沫, 実綿 啓明, 船曳 定実, 折田 薫三
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1255-1262
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌および大腸癌肝転移に対する治療方法と予後につき検討した.対象は昭和56年1月より昭和59年6月までの胃癌および大腸癌の肝転移症例のうち,原発巣切除, Po, N3以下の症例36例(胃癌9例,大腸癌27例)であった.胃癌肝転移症例では動脈塞栓術を反復した1例が2年生存中であるが,他の大部分の症例は1年以内に死亡した.大腸癌肝転移症例では肝切除9例中6例が15ヵ月~41ヵ月生存中であるが,他の治療法では2年以上の生存はなかった.肝切除は11例に行われたが,生存例はすべて大腸癌症例であり,とくに2cm以下の転移巣で肝部分切除例に予後良好例がみられた.動脈塞栓術は8例に行われ, 2例が有効であった. 2例はH1, H2のhypervascularな肝転移巣であり,このような症例が動脈塞栓術の良い適応と考えられた.抗癌剤の動注,門注症例では薬剤の投与期間も短かく,有効例は1例のみであった.胃癌,大腸癌肝転移の予後向上のためには原発巣の治癒切除に準じた切除と肝転移巣に対する積極的な治療が必要で,肝切除,動脈塞栓術,抗癌剤の動注療法に延命効果がみとめられた.
  • 術前危険因子の分析と手術成績
    内田 久則, 中山 義介, 横田 和彦, 刑部 恒男, 蔵並 勝, 石川 淳, 三重野 寛喜, 佐藤 光史, 高橋 俊毅, 大宮 東生, 前 ...
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1263-1271
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和46年9月より59年8月まで,慢性腎不全で長期血液透析中の61例で,さまざまな開腹手術を行った.腎不全に対する術前管理として,待期的手術の場合,血液透析を2日間行い,腹部手術操作が広範であれば,術後は術当日より一週間前後腹膜灌流を行って,血液透析へ戻した.緊急手術の場合,術直前の短期間血液透析を行い,術後は待期的手術例と同じように管理した.
    術後合併症は全体の29%に認められた.おもなものは,後出血,偽膜性腸炎,肺合併症である. 1ヵ月以内の手術死亡率は16.1%で,直接死因は大多数が複合臓器不全であった.
    術前の合併症あるいは異常病態10項目につき,術後1ヵ月以内の手術死との相関につき検討したところ,緊急手術,再手術,ショック,長期コルチコイドの使用,肝機能異常,呼吸機能障害,腹腔内感染の7項目が手術死亡と有意に相関していた.おのおのの危険因子を1点のscoreとすると, 4点までの症例の死亡率は8.9%であった.一方,このscoreが5点以上の症例の死亡率は83.3%にも達した.
  • 金親 正敏
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1272-1279
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹部血管造影は胃癌,大腸癌など悪性疾患の術前検査として広く行われている.しかし,観血的検査手技であるにもかかわらず,血管造影を行う際に,全例検査が可能か,またいかに速やかに目的の検査を成功裏に終えるかの検討はなされずに行われてきた.もし,検査に際しての危険性,さらに目的血管の走行,性状を血管造影施行前に知る手段があれば,極めて安全かつ迅速に血管造影を施行できることになる.そこで,今回私たちは,胃癌,大腸癌の手術前の51例(男29例,女22例,平均年齢56.2歳)に対して,血管造影に先立って超音波検査を施行した.超音波検査により所見を, 1) 腹部大動脈と腸骨動脈の動脈硬化による狭窄の状態, 2) 腹部大動脈,腸骨動脈の蛇行の程度, 3) 大動脈瘤の有無の各3項目について等級分けし,血管造影施行にあたっての危険度の基準としてまとめた.各項目合計II度以上を慎重適応, III度以上を非適応とした. 51例中慎重適応となった症例は2例,非適応となった症例は3例であった.また,腹腔動脈,上腸間膜動脈,下腸間膜動脈においては,大動脈より分岐する位置,分岐が大動脈の縦断面及び横断面でなす角度を測定して,各動脈の分岐走行の性状を明らかにし,選択的血管造影を施行するための,極めて有用な情報を得ることができた.腹部選択的血管造影に際して,腹部超音波検査を先立って行うことは臨床的に有意義と判断した.
  • 山口 豊, 小幡 貞男, 崎尾 秀彦, 有田 正明, 籾木 茂, 藤沢 武彦
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1280-1284
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    気管分岐部切除を伴う肺全摘除を行った症例を経験したので報告する.
    症例は66歳女性で,主訴は咳嗽,呼吸困難,胸部X線では中幹気管支以下無気肺,気管支鏡所見では腫瘍は中幹気管支に発生したものと考えられ,癌浸潤は気管分岐部からさらに左主気管支に及んでいた.
    右開胸,奇静脈結紮切断後,気管,右及び左主気管支を遊離して,切除範囲を決定した.気管は気管分岐部より2気管軟骨輪,左主気管支は気管分岐部より3軟骨輪切除して,気管分岐部切除を伴う右肺全摘除を行い,気管・左主気管支端々吻合を施行した.組織学的診断は腺様嚢胞癌であった.
    気管分岐部切除を行った自験例についての考察と,本術式に関する2, 3の問題点について言及する.
  • 光永 伸一郎, 木村 秀樹, 松本 明石, 小川 利隆, 有田 正明, 藤沢 武彦, 山口 豊
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1285-1288
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    体重減少と呼吸困難を主訴として来院した2歳3カ月の男児に対し,緊張性肺嚢胞症の診断のもとに緊急に嚢胞切除術を行い救命し得た.術後早期より肺機能の改善を認め,半年後の現在,再発の徴候もなく,発育も正常で元気に日常生活を行っている.緊急手術の重要性を強調した.
  • とくに興味ある4例について
    兼行 俊博, 秋本 文一, 小林 修, 新谷 清, 守田 知明
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1289-1295
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    成因ならびに治療上興味のあった慢性膿胸の4例を報告した.
    第1例は結核性荒蕪肺に続発したもので,全身状態ならびに肺機能が悪く,開放性排膿術を行ったが失敗した.ドレナージで全身状態が改善したので左肺全摘に踏み切った.術後重篤な呼吸不全に陥ったが,幸運にも救命出来た.
    第2例は9年間に亘るsilent empyemaが増悪し,胸膜腫瘍を疑われて来院した.本症例ではその病歴ならびにX線所見から腫瘍は除外出来,肺剥皮術で軽快した.
    第3例は特発性血気胸が原因と推定されたが,開胸時には出血部位は確認出来ず,剥皮術と数回の胸腔穿刺で軽快した.
    第4例は気管支瘻に対し既に筋肉弁充填と肋骨切除が行われており,遺残腔に炎症を反復したもので,抗生剤とウロキナーゼ製剤による頻回の腔洗滌で軽快せしめ得た.本症例の如く,腔縮小術あるいは開放療法も適応とならないものには,洗滌療法も試みる価値があろう.
  • 宇藤 純一, 後藤 平明, 金子 泰史, 西村 紀久夫, 多田隈 和雄, 合島 雄治, 合志 秀一, 村本 一浩, 鶴本 泰之, 宮内 好正
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1296-1300
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は36歳の女性で,呼吸困難と上下肢の浮腫を主訴として某医を受診し,心エコー検査と上大静脈造影にて右房内腫瘍と診断され,当科に緊急入院した.右房内腫瘍による急性心不全の診断で緊急手術を施行した.完全体外循環下に右房を切開すると,右房内を占拠し,さらに下大静脈・右肝静脈内に連続する腫瘍を認めた.本腫瘍は心房壁との直接の連続がなかったことから,下大静脈・右房内へ発育した肝原発の悪性腫瘍と診断し,右房・下大静脈内の腫瘍を可及的に摘出し手術を終了した.
    術後の肝のCTおよび超音波検査にて肝右葉後区域から内側区域に至る大きな腫瘤を認め,摘出標本の病理組織学的検査で肝細胞癌と診断された.術後心拍出量は増加し,上下肢の浮腫も消失し,術前に比べ肝機能障害も改善し退院した.
    下大静脈・右房内へ発育した肝細胞癌は剖検報告ではまれではないが,これを生前に診断しえた報告例はきわめて少ない.本例では心臓内腫瘍と診断し手術を施行したが,今後,心臓を含めた腹部の超音波検査により,大血管内に発育する肝細胞癌を診断する機会も増えると思われる.
  • 梅原 松臣, 足立 幹夫, 鄭 淳, 金 徳栄, 青木 伸弘, 田中 洋介, 田尻 孝, 山下 精彦, 恩田 昌彦, 細井 盛一, 本多 一 ...
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1301-1305
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 43歳男性.精巣腫瘍のため高位除睾術を施行したが,術後多発性肺転移をきたした.化学療法を考慮するも,日本住血吸虫症による脾機能亢進症のため,白血球数2,200/mm3, 血小板数6.4×104/mm3と著明に低下していた.そこで,脾機能亢進症改善の目的で,選択的脾動脈塞栓術(Splenic artery embolization, SAE)を施行したところ,白血球数と血小板数が著明に増加し,安全に化学療法を開始することができた.制癌剤は, Etoposide, Cisplatin, Vinblastine, Bleomycinを使用し,投与後約4ヵ月で,転移性肺癌の消失をみた.なお,制癌剤投与後一過性に白血球数の減少がみられたが,休薬により回復した,一方血小板数は制癌剤投与の影響を受けなかった. 4ヵ月後の現在でも,白血球数5,000/mm3前後,血小板数20×104/mm3前後維持している.
    本症例のごとく,脾機能亢進症に悪性腫瘍が合併することは決して稀ではない.この様な症例では,汎血球減少症が問題となり,化学療法が躊躇されることが少なくない. SAEにより脾機能亢進症が改善され,かつ安全に化学療法を行なうことができた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えSAEの有用性を報告する.
  • 下大静脈瘻の1治験例
    浜崎 尚文, 伊藤 勝朗, 小川 正男, 応儀 成二, 野津 長, 田中 孝一, 原 宏, 森 透
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1306-1309
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原因不明の胸膜炎精査中に,腹部に血管性雑音が聴取されたのが契機となって右総腸骨動脈-下大静脈瘻と診断するに至った症例を経験した.患者は36歳の男性でおおよそ1年前に椎間板ヘルニア手術の病歴がある.
    手術時,右総腸骨動脈に下大静脈下端に開口する2個の瘻孔を認めた.これらの瘻孔を動脈内腔側より縫合閉鎖したのち,右総腸骨動脈はePTFE人工血管(Gore-tex)で置換し再建した.瘻孔の部位,性状,ならびに動脈壁所見などを総合して考察すると,椎間板手術にその原因を帰するのが妥当であると思われた.
    右下肢知覚異常,腰痛,胸苦しさなどの自覚症状は,術後,劇的に改善した.
    本症は稀とは言え,腰部椎間板ヘルニア手術に伴なう合併損傷として重要であるに留まらず,心不全,腎不全あるいは深部静脈血栓症などの疾患と見誤まられやすいので改めて注意を喚起する目的で報告する.
  • 佐道 三郎
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1310-1313
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹部外傷により,腸管の虚血が原因で発生した遅発性腸狭窄の1例を報告する.
    症例は51歳男性で,腹部外傷後,軽度の腹膜刺激症状,および貧血が認められ,入院の上保存的療法を行なったところ,症状の改善がみられいったん退院した.しかし,受傷後2週目にイレウス症状を呈し,再入院の上手術を施行したところ,腸間膜裂傷による動脈損傷がみられ,末梢領域に虚血性変化によると思われる輪状潰瘍を生じていた.
    従来,外傷後,腸管に虚血性変化を来たした症例は数例報告されているが,いずれも癒着や,炎症性腫瘤の圧迫が原因となった症例であり,本症例のごとく動脈の断裂が原因となった症例は,極めて稀である.
    腹部外傷では,腹腔内出血,腹腔内臓器損傷などが原因となり,緊急手術が施行される例はほとんどであるが,本症例のように,受傷後2週間以上経過した後,遅発性腸狭窄を生じ,手術適応となる症例が存在することを考慮し,治療にあたることが必要と思われる.
  • 沼田 稔, 細江 志郎, 伊藤 憲雄, 今井 寿生, 西牧 敬二, 林 四郎
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1314-1319
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    動脈硬化に起因する血行障害は,病変が単一個所にとどまることが少ないため,治療として行なう血行再建術式の選択に際しても,一つの術式を行ったのでは血行改善が不充分であることも往々にしてあり,複数種類の血行再建術を同時に併用する必要が生ずる症例も少なくない.われわれの教室では, 5cmを起える狭窄または閉塞例にはby-pass graftの移植術を, 5cm未満の狭窄例にはPTAを,閉塞例で主要分枝部にはby-pass graftの移植術を,非分岐部には血栓内膜除去術を行うことを基本方針としてきたが, 1973年よりの10年間に,この方針により血行再建術を行った53症例のうち33%の症例に再建術式を併用した.その内訳は, by-pass graftとPTAの併用例19%, 複数個所へのby-pass graftの設置例11%であった. by-pass graftの開存率向上のためにも,このような複数種類の再建術式を併用することにより, graftへの血流およびrun offの改善操作を加えて血行再建を行う努力が必要である.
  • 河野 辰幸, 吉野 邦英, 滝口 透, 山崎 繁, 妙中 俊文, 下重 勝雄, 毛受 松寿
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1320-1326
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    教室において最近の7年間に経験した良性食道狭窄の6症例を報告し,その治療方針について考察した.〔症例1〕46歳女性,十二指腸潰瘍の悪化に伴う逆流性食道炎に起因する下部食道狭窄に対してMedi-Techカテーテルによる拡張術を施行.生活指導と薬物療法により再発なく経過観察中.〔症例2〕64歳女性, Sjögeren症候群にて経過観察中頸部食道に狭窄が出現. Medi-Techカテーテルにより拡張.食道Webと診断,経過観察中.〔症例3〕59歳男性, 26歳のとき自殺目的で硫酸を服用.以後中部食道の狭窄に対してときどきbouginageをうけていた.嚥下障害の再発と心窩部痛,体重減少などが出現, X線造影で狭窄部の悪性化が疑われたが,精査により否定.内視鏡のブジー効果で症状は軽快したが厳重に経過を観察中.〔症例4〕49歳男性, 8年前に胃十二指腸潰瘍を指摘されて以来数回の吐血歴あり.食道裂孔ヘルニアに伴う逆流性食道炎による下部食道狭窄が出現.本人の生活状況,経過から狭窄部切除,空腸間置による再建と迷切術を施行.〔症例5〕38歳男性, SLEに合併した下部食道の狭窄で, bouginageなどの保存的療法で一旦軽快したが,症状の再発があり,胸部食道を切除後,胸骨後経路で空腸により再建.〔症例6〕45歳女性,精神分裂病に対してのcarbamazepine内服に起因する無顆粒球症による細菌感染の結果中部食道に狭窄をきたした.狭窄が高度で広範なため,胸部食道切除後空腸により再建.
    良性食道狭窄の治療において保存的療法がより好ましいことに異論はない.とくにGrüntzig型バルーンカテーテルは効果と安全性の点で有用であつたが,再発やことに癌合併の可能性に対する経過観察を含めた後療法が非常に大切であり,また,外科治療が必要な場合においても,癌合併の危険性をもつ症例では積極的に狭窄部を切除し,かつ機能的に優れた術式を選択すべきであると考えられた.
  • 宮本 幸男, 中村 正治, 内田 治, 石川 仁, 古谷 寿一郎, 川井 忠和, 泉雄 勝
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1327-1329
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道癌と平滑筋腫が併存することは決して少なくないと思われるが,平滑筋腫と癌が別個に存在する場合がほとんどである.今回,十二指腸潰瘍の内視鏡検査中,食道粘膜下腫瘍に接した早期食道癌症例を経験したので報告する.
    症例は60歳の男性で十二指腸潰瘍の内視鏡検査中,食道症状はないものの食道内視鏡検査が同時に行なわれ,胸部上部食道に粘膜下腫瘍様病変に接し,陥凹病変がみられ生検にて扁平上皮癌と診断された.一期的手術が行なわれ,切除標本では1.5×1.5cmの粘膜下腫瘍の一部にかかり, 1.0×1.0cmの表在陥凹型の病巣をみとめ,組織学的にはsm, no ly0, v0の早期癌であった.
    このように平滑筋腫と早期食道癌が同一場所に併存する例は極めてまれであり,内視鏡検査の重要性が示唆された.
  • 石山 秀一, 幕内 雅敏, 太田 恵一朗, 山崎 晋, 長谷川 博
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1330-1335
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    急性閉塞性化膿性胆管炎を併発した肝門部胆管癌に対し緊急拡大右葉切除術を行い,救命し得た.本症例の腫瘍は右肝管を中心に肝実質,右門脈本幹に浸潤しており,右葉の胆管はばらばらに閉塞し,化膿性胆管炎,肝膿瘍を来していた,超音波誘導下に可能な限り胆管ドレナージを行ったが不十分で,敗血症, DIC準備状態に陥った.肝切除術以外に救命する手段はなく,左尾状葉合併切除を含む緊急拡大右葉切除術を行った.術中,細菌の血中への流入を防止するために肝内胆管,肝膿瘍の排膿,洗浄を十分に行った.これには超音波が非常に有用であった.また左葉は右門脈閉塞のために著明な代償性肥大をおこしていた.術後は一時,消化管出血がみられたが保存的治療にて改善し,術後29日目に独歩退院した.経皮経肝的胆道ドレナージによっても制御できない急性化膿性胆管炎を合併した肝門部胆管癌に対しては,積極的に肝切除術を行うべきであると考えられた.
  • 村上 雅彦, 新井 一成, 幡谷 潔, 福島 元彦, 石井 博, 竹元 慎吾, 河村 一敏, 片岡 徹, 小池 正, 諸星 利男, 宗近 宏 ...
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1336-1343
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肝嚢胞腺癌(Biliary Cystadenocarcinoma)は極めて稀な疾患であり,術前診断に難渋する疾患の1つである.症例は79歳の女性,右上腹部腫瘤を主訴に入院.精査にて単純性肝嚢胞と診断し,全身状態から開窓術のみに終った.病理組織診断は肝嚢胞腺腫で再発・癌化を考慮し,経過観察中の1年8ヵ月後に腹部腫瘤を再び認め, CT-scan・血管造影検査などから再発癌化,すなわち肝嚢胞腺癌と診断した.再開腹時に表面凹凸不整な肝左葉腫瘤と,一塊となった小・大網と腹膜・腸間膜への播種性転移が認められ,腫瘤核出術および小・大網切除術を施行するという興味深い経過をたどった.
    文献的に集計し得た本邦報告例は自験例も含めて27例と極めて稀な疾患であり,かつ,術前診断に難渋することから,本邦例を集計し,詳細に亘る検討を加え報告する.
  • 坂田 育弘, 黒岡 一仁, 丸山 次郎, 桂 康博, 安富 正幸
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1344-1349
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    輪状膵は膵組織が十二指腸下行部を環状にとり囲む胎生期の発生異常である.著者らは成人に発症した輪状膵に対して術前に確定診断を下し,手術を施行した2症例について報告する.
    症例1は19歳の女性で上腹部痛,嘔気,嘔吐を主訴として来院した.
    症例2は20歳の男性で心窩部痛,背部痛,嘔気,嘔吐を主訴として来院した.
    2症例ともに低緊張性十二指腸造影,十二指腸ファイバースコピー, ERCP,腹部CTスキャン等の所見より輪状膵の診断にて手術施行し治癒した.術後,症例1は6年,症例2は4年を経過しているが再発症状は認めていない.さらに,この2例を加えて文献より術前輪状膵の診断のもとに手術を施行した成人輪状膵31例についての集計を報告する.
  • 山下 裕一, 戸次 吏敏, 納富 昌徳, 磯本 浩晴, 掛川 暉夫, 古賀 暉人, 長崎 嘉和
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1350-1354
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎の特殊型の1つとして,膵頭部と総胆管,十二指腸に囲まれたGroove(溝)内に局在して発生した限局性膵炎,所謂Groove pancreatitisと診断した症例を経験したが,本疾患に関しては本邦では未だ,詳細な報告がなされておらず,それゆえ,文献的考察を加えて報告する.
    本症例の臨床所見は十二指腸粘膜下腫瘍様病変であり,病理組織学的検査では十二指腸と総胆管に挾まれた膵組織に出血,炎症性細胞浸潤,膿瘍形成,高度の線維性変化,副膵管内の結石が認められ,さらに,隣接する十二指腸にはBrunner腺の過形成が認められた.
    本疾患の主な臨床所見は十二指腸狭窄と膵頭部腫瘤であり,膵頭部癌との鑑別が必要となってくるが,その鑑別は容易ではない,しかし,本疾患の存在を知ることは膵癌と慢性膵炎との鑑別診断を行う上で重要であると考えられた.
  • 稲吉 厚, 山崎 謙治, 池田 恒紀, 松岡 雅雄
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1355-1359
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    膵膿瘍は稀な疾患であるが,膵炎に続発する重篤な疾患であり,適切な治療が行われない場合, 80~100%の死亡率が報告されている.最近の超音波診断装置の進歩により,膵膿瘍の診断能も向上しており,また,穿刺用探触子の開発によって超音波ガイド下穿刺が比較的容易に行えるようになり,診断がより確実となった.さらに,診断のみでなく,超音波ガイド下穿刺ドレナージを行うことによって膵膿瘍の治療も可能となってきている.われわれは最近,慢性膵炎が原因と思われる膵膿瘍に対し,超音波ガイド下穿刺ドレナージを施行し治癒させることができたので報告する.症例は, 43歳男性で,既往にアルコール依存症によるアルコール性肝硬変があり,高熱,腹部膨満感を主訴として来院した.超音波検査およびCT検査で,膵石を伴なう慢性膵炎の所見を認めるとともに,膵体尾部から後腹膜腔に拡がる膿瘍像を認めた.超音波ガイド下穿刺ドレナージを施行し, 2ヵ月後には膿瘍の消失を認めた.
    超音波ガイド下穿刺ドレナージは,開腹ドレナージに比べ侵襲が少なく簡単に施行でき,本例の如く手術なしに治癒させることも可能であることから,今後は膵膿瘍のドレージ法として有用な手段となりうると考えられる.
  • 特に近年の画像診断の進歩に伴う病像の変化について
    山下 共行, 児玉 孝也, 小原 孝男, 岡本 高宏, 田村 真佐子, 金地 嘉春, 伊藤 悠基夫, 藤本 吉秀, 平山 章
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1360-1368
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    巨大脾嚢腫を2例経験した.第1例は13歳女性の脾偽嚢胞で,漿液性内容液を含む単房性の嚢胞を形成していた.第2例は40歳女性の脾海綿状血管腫で,漿液性の内容液を含む多房性の嚢腫を形成し,術前認めた汎血球減少症は脾摘後治癒した.この2例の脾嚢腫はどちらも巨大であり,手術適応について特に問題となることはなかった.しかし,最近文献に報告されている脾嚢腫症例を分析してみると,超音波, CTなどの検査法の進歩により,脾嚢腫は今日稀な疾患ではなくなり,中でも偶然発見される無症状の小嚢腫例が増加していることがわかり,今後それらの症例に対し手術適応が問題になってくると思われた.また,本邦で報告された脾血管腫42例,脾リンパ管腫42例を集計し病像を検討した.特に脾血管腫については他臓器の血管腫とは異なる病像をとりうること,すなわち初期には小さい充実性の腫瘤を形成しているがやがて嚢腫を形成して大きくなり,嚢腫腔内では血液の吸収がおこり,第2例で認めたように漿液性の内容液を貯留する経過をとる可能性のあることを示した,さらに脾嚢腫を形成する幾つかの病変相互の鑑別診断に関し,近年新しく発見された病態を含め臨床の立場から検討を加えた.
  • 田中 弦, 安井 昭, 西田 佳昭, 渋沢 三喜, 幡谷 潔, 李 中仁, 水島 秀勝, 栗原 稔, 尾崎 浩史, 鈴木 孝
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1369-1373
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近,後腹膜脂肪肉腫完全剔出の1例を経験したので文献的考察と併せて報告する.症例は55歳男性で,昭和58年7月左腰部痛及び左側腹部腫脹を主訴として某医を受診した.精査を勧められ9月16日当院に入院し超音波, CT,血管造影などの画像診断法および, Aspiration biopsyにて後腹膜悪性腫瘍と診断した. 10月12日腫瘍摘出術及び脾摘,左横隔膜部分切除,左第XII肋骨切除を施行した.摘出腫瘍は黄褐色,弾性軟,大きさは30cm×20cm,重さは1,400gで病理組織学的にはPleomorphic typeのLiposarcomaであった.
  • 宇都宮 高賢, 岡部 正人, 高城 克義, 並川 和男, 由布 雅夫, 川村 亮機, 三角 幹夫, 浜田 勢治
    1985 年 46 巻 10 号 p. 1374-1379
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    消化管腫瘍の中で,その発生頻度が比較的希である小腸原発性の良性非上皮性腫瘍の2例について報告した.両者とも経過中に出血性shockを呈し,うち1例は,緊急手術を要した.
    脂肪腫の1例は, 76歳男性であり,黒色便を主訴として来院,高度の貧血,低蛋白血症を呈し,小腸二重造影,血管造影にて,回腸における良性腫瘍として手術を施行し,治癒した.
    平滑筋腫の1例は, 26歳男性であり,下血を主訴として来院.前者同様,貧血および,低蛋白血症を呈し,緊急内視鏡にてTreitz靱帯より肛門側近位空腸病変からの出血と判断し,血管造影施行により,造影剤の漏出像,腫瘍濃染および,漏出造影剤による腫瘍の消化管内隆起像を確認した.空腸平滑筋腫瘍と診断し,緊急手術的により治癒せしめ得た症例である.
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