抄録
1976年1月から1985年12月までの10年間に大動脈・腸骨動脈の閉塞性動脈硬化症90例に血行再建術を行ったが,うち72例121肢が,解剖学的バイパス手術例であった.この72例中3例4肢にグラフト閉塞を, 4例5肢に吻合部狭窄を認めた.この7例を分析し,グラフト閉塞・狭窄の原因とその予防について検討を加えた.
7例とも男性で,年齢は43歳から62歳であった.施行された手術は, Yグラフト移植4例,単管グラフト移植3例で,再手術は拒否した2例を除く5例に施行された.閉塞・狭窄例の血管撮影所見,手術所見より,主たる原因は,不適切な吻合部位,方法,末梢病変の進行, run-off不良,吻合部パンヌス形成(anastomotic neointimal fibrous hyperplasia)であった.その予防として,中枢側は可能な限り大動脈高位で端々吻合し,末梢側は大腿深動脈にかけて吻合し,術後は抗血小板剤の投与を考慮するべきと思われた.