抄録
症例は82歳女性.下腹部の疼痛を主訴として入院したが大動脈造影にて腹部大動脈瘤と,大腸内視鏡にてS状結腸にBorrmann II型の悪性腫瘍を認めた.本患者は高齢でありまた心肺腎疾患を合併していたため,二期的手術侵襲はより危険と考えられた.このため持続硬膜外麻酔下に腹部大動脈瘤を人口血管にて置換し次いでS状結腸の悪性腫瘍を切除吻合し左結腸曲に一時的人口肛門を造設する一期的手術を行った.術後経過は良好で術後60日目に軽快退院した.従来腹部大動脈瘤に対する人口血管置換術と消化管手術を一期的に行う手術術式は術後の感染を考慮し一般には禁忌とされてきた.しかし心肺腎機能低下を合併する高齢者では,二期的な手術侵襲は危険でありこのため症例によっては同時手術の方が患者にはより有利となる.今日まで腹部大動脈瘤と下部消化管悪性腫瘍に対する同時手術の成功例の報告は少ないので若干の考察を加えここに報告する.