日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
超音波にて診断しえたびまん性脾転移を伴う十二指腸カルチノイドの1症例
稲吉 厚岡本 実林田 信夫師井 良知八木 泰志池田 恒紀蔵野 良一
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 50 巻 11 号 p. 2408-2412

詳細
抄録

十二指腸カルチノイド腫瘍は,比較的まれな疾患であるが,今回,びまん性脾転移をともない,その超音波像において高エコー結節像として検出された十二指腸球部カルチノイド腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は,75歳の女性で左側腹部痛,体重減少を主訴に来院した.超音波検査で肝脾腫を認め,脾内にはびまん性に多数の小結節の集簇した腫瘤像を認めた.各種画像診断および腹水,肝,脾の穿刺細胞診を施行したが,確定診断の得られないまま入院後3ヵ月目に肝腎不全で死亡した.剖検を行ったところ,十二指腸球部に1.1cm大のカルチノイド腫瘍を認め,肝,脾,腎,肺,リンパ節など広範な転移を認めた.特に脾は著明に腫大し,内部にはびまん性に多数の小結節の集簇を認め,超音波像によく反映されていた.カルチノイド腫瘍の肝転移の超音波所見に関する報告は散見されるが,びまん性脾転移の超音波像に関する報告はなく,貴重な症例と考え報告した.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top