抄録
嚢胞内乳癌は,その発生過程において嚢胞を形成する点で乳癌の特殊型とされ,その発生頻度は0.5~3.5%といわれている.われわれは過去12年間の乳癌症例581例中2例(1.7%)の嚢胞内乳癌を経験した.
本症の診断には嚢胞充気撮影法,超音波検査,嚢胞液細胞診が行われているが,最近では嚢胞内腫瘍部への超音波ガイド下の穿刺吸引細胞診の有効性も報告されている.しかし何れの方法にても診断が困難な場合は,積極的に摘出生検を行うべきである.
本症は,通常型乳癌の一亜型であり,壁外浸潤の有無に関連をもちながら,病変の進展過程において嚢胞形成を有するものと考えられる.一般に発育速度は緩慢で予後良好とされているが,転移の可能性を有しているため,腋窩リンパ節郭清を含む非定型的乳房切断術は必要であると考えられる.