1990 年 51 巻 3 号 p. 535-537
腸間膜裂孔ヘルニアは稀な疾患で,裂孔への腸管の嵌入による絞扼性イレウスとして発症するものが多い.最近,本症の1例を経験したので報告する.症例は9歳の女児で,小腸間膜裂孔部に回腸が嵌入したため絞扼性イレウスを併発し,小腸切除を行って救命しえた.本症の発症は急激であり,頻度も少なく,術前診断は困難を極める場合が多い.イレウスの診断の際には,発症年齢,既往歴や手術の有無,発症の経過などから本症を充分に考慮し,かつ,本症は絞扼性イレウスの診断がつき次第,早期に外科的治療を開始する必要があることを強調した.