抄録
76歳男性の『いわゆる食道癌肉腫』の1例を経験したので報告する.病変は胸部中部食道に存在する潰瘍形成型の腫瘍であった.食道亜全摘術を施行,摘出標本のHE染色の結果,低分化型の扁平上皮癌と多形型細胞を持つ肉腫様病変を認め,両者の間に移行像が観察された.上皮細胞にみられるケラチンと上皮膜抗原(EMA)および非上皮細胞にみられるビメンチンとα1-アンチキモトリプシン(α1-ACT)のそれぞれの抗体を用いて本症例の肉腫様病変の由来を免疫組織化学的に検討した.その結果,肉腫様病変はケラチン陰性であったが, EMA,ビメンチンそしてα1-ACTのいずれにも陽性であり,上皮と非上皮性の両方の特徴を示した.今日『いわゆる癌肉腫』は癌腫が肉腫様の形態学的変化を示したものと考えられているが,本症例では細胞内の中間フィラメントのレベルにおいて上皮性の上に中胚葉性性格をも獲得していると推測された.