抄録
症例は57歳男性. 1982年上腹部不快感を主訴に受診,胃透視及び胃内視鏡検査にて隆起性病変を指摘されたが,生検にてGroup-IIであったため経過観察となっていた. 1989年再び上腹部不快感出現し,胃透視及び胃内視鏡検査にて隆起性病変以外にIIc型早期胃癌が指摘され胃亜全摘出術施行となった.隆起性病変は胃粘膜下嚢腫症で,切除標本を全割したところ嚢腫は胃角部を中心にびまん性に分布し一部粘膜には異型上皮も認められた.
胃粘膜下びまん性嚢腫症は以前より癌との合併が論じられており,また最近超音波内視鏡で診断可能となり注目されている疾患である.自験例は本症の存在が疑われた7年目に癌と異型上皮の発生をみたため若干の文献的考察を加えて報告した.