抄録
Gardner症候群の1例を経験したので報告する.患者は51歳,男性で主訴は下痢と血便であった.注腸及び大腸内視鏡検査にて大腸に無数のポリープを認め,直腸と横行結腸に進行癌を認めた.また,胃内視鏡検査にて胃底腺ポリポーシスと診断された.左肩に軟部腫瘍を認め摘除生検にて脂肪腫と診断された.更に,下顎骨骨腫と仙骨骨腫を認めた.家族内に大腸ポリポーシスを有している者はいなかった.手術は全結腸直腸切除, J型回腸嚢肛門管吻合術を行った.回腸嚢肛門管吻合はPCEEAを用いた貫通重積法にて行った.この方法は比較的簡便な方法であり術後合併症もなかった.大腸ポリープは盲腸から直腸まで約2,500個存在し,病理学的に, tubular, tubulo-villous,及びvillous adenomaの各型が認められた.横行結腸癌は高分化腺癌, ssβ, ly1, v0であった.直腸癌は高分化腺癌, pmであった.術後8カ月目に回腸瘻閉鎖術を行ったが,排便機能は良好であった.