抄録
胃潰瘍穿通によると思われる肝膿瘍の1例を経験したので報告する.
症例は, 68歳,男性.上腹部痛,発熱を主訴に来院.腹部超音波検査, CT検査にてガス像を伴う肝膿瘍と,それに接する胃壁の肥厚を認めた.胃内視鏡検査にて胃角小弯に深堀れの強い潰瘍を認め,胃潰瘍穿通による肝膿瘍と診断.入院後2日目に超音波ガイド下経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を施行.細菌培養検査にてStreptococcus salivariusが検出された.膿瘍腔造影では消化管との交通は認めなかった.肝膿瘍にはドレナージ処理のみとし,穿通性胃潰瘍に対しては広範囲胃切除術を施行した.
本例は, (1) 穿通性胃潰瘍の存在, (2) 膿瘍腔内のガス像の存在, (3) 培養にてStreptococcus salivariusが検出されたことから,胃潰瘍穿通に伴う肝膿瘍の形成と考えられる.このような発生機序の肝膿瘍は本邦での報告はなく,極めて稀な症例と考える.