抄録
症例は54歳女性,潰瘍を伴った小児頭大の左乳房腫瘤と強度の貧血を主訴として入院した.胸部X線にて両側肺に多発性転移巣を認めた.精査にて悪性葉状腫瘍と診断し,非定型的乳房切除術を施行した.組織学的に上皮成分には異型性は認めず,異型性を示す肉腫様組織は平滑筋肉腫様に見え,また軟骨肉腫,血管肉腫の形態も見られ,一部には類骨細胞も見られた.エストロジェン・レセプターは弱陽性を示したが,いかなる内分泌,化学療法にも反応せず, 5カ月後,肺転移に基因する呼吸不全にて死亡するに至った.本疾患は外科的治療が唯一の確実な治療法であり,早期に切除することが必要である.