抄録
比較的まれな直腸肛門部悪性黒色腫の1例を経験したので報告する.症例:患者は43歳,男性で肛門出血,腫瘤脱出を主訴に来院した.術前生検にて悪性黒色腫と診断し,腹会陰式直腸切断術, R3リンパ節郭清を施行した.そけいリンパ節郭清は施行しなかった.切除標本肉眼所見では歯状線上に灰褐色,一部黒褐色の有茎性腫瘤を認めた.病理組織学的所見では腫瘍細胞の胞体内にしぱしぱメラニン顆粒を認めたが,大部分はamelanoticであった.深達度はsm, ly0, V0であったが,固有筋層外側に接した壁在リンパ節に転移を認めた.免疫組織化学染色ではメラニン顆粒を含む腫瘍細胞とamelanoticな腫瘍細胞共にS-100蛋白陽性であった.考察および結語:直腸肛門部の隆起性腫瘍を認めた場合は悪性黒色腫の存在を念頭におくべきである.診断にS-100蛋白陽性像を証明することがきわめて有用であった.