1992 年 53 巻 12 号 p. 2838-2843
乳癌の超音波エコー所見を解析し,客観的な数値として表すことによって,さらにその診断能を向上させる目的で,カイ二乗検定,数量化II類を用いて検討した.平成2年7月から平成3年2月までに行った乳腺エコー250例のうち組織診のついた90例を対象とした.まず,乳癌と他疾患の鑑別をカイ二乗検定を用いて行った.その結果,乳癌と良性腫瘍では辺縁,境界,後方エコーの所見において,各々p<0.01の有意差を認めた.次に,所見項目毎に項目数を決定し,数量化II類に当てはめて解析した.その結果,境界が不規則帯状(0.72802),後方エコー減弱(0.54778)といった項目はCategory scoreが共に大きく,非常に悪性項目であると判明した.さらに,得られたCategory scoreの有用性を確めるために,その後新たに乳癌と診断された34例の所見に当てはめて計算した結果,正診率は85%であった.以上より,算出したCategory scoreは診断能の向上に有用であると考えた.