日本臨床外科医学会雑誌
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小腸穿孔の臨床的検討
柚木 靖弘小谷 穣治湯村 正仁山下 裕椎木 滋雄佐々木 寛
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キーワード: 小腸穿孔, 腹膜炎
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1992 年 53 巻 12 号 p. 2879-2883

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抄録

過去10年間に当院で経験した小腸穿孔症例26例を対象とした.穿孔の原因には,腹部外傷と異物が多かった.平均は47.6歳で,男女比は19:7であった.初診時全例が腹痛を訴え,ショック症状を呈したものは5例であった. 70%の症例では発熱を認めなかった.平均白血球数は14,400/mm3で, 80%の症例で増加していた.レントゲン的に腹腔内遊離ガス像は17%に認めたが,術前に異物は指摘できなかった.汎発性腹膜炎の術前診断で開腹に至ることが最も多く,術前に小腸穿孔と診断し得たのは3例のみで全て腹部外傷によるものであった.術式として穿孔部単純縫合閉鎖術と穿孔部腸管部分切除術がほぼ同数に行なわれた.術後合併症は42%にみられ,術死は術翌日にエンドトキシンショックで死亡した1例のみであった.小腸穿孔は,術前に診断することが極めて困難であるが,原因疾患の探求に時間を費やすことなく早期に手術を行うことが大切と考えられた.

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