日本臨床外科医学会雑誌
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腹壁瘢痕ヘルニア症例の検討
深田 代造田中 千凱伊藤 隆夫大下 裕夫
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1992 年 53 巻 12 号 p. 2898-2903

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抄録

最近10年間に治療した34症例の腹壁瘢痕ヘルニア症例につき検討を行った.症例の性別は,男性9例,女性25例で,平均年齢は男性55.7歳,女性64.1歳であったことから本症は高齢の女性に多い疾患であるといえたが,開腹手術から瘢痕ヘルニア手術までの期間の長い症例においてこの傾向がとくに顕著であった.瘢痕ヘルニアのうち開腹手術後1年以内の早い時期に発生するものは閉腹時の手技的な不備によるところが大きいと考えられ,開腹手術時に本症予防に対する充分な配慮がなされればある程度防止できるものと思われた.一方,開腹手術後10年以上の長期経過後に発生するものは女性の下腹部創に多く,ヘルニア門が小さくて自覚症状も少ないことから放置されていることが多いが,経過中に嵌頓などの合併症をおこして来院する率が高かったので,可及的早期の治療が望ましいものと思われた.

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