日本臨床外科医学会雑誌
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非クロストリジウム性ガス壊疽の1治験例
植田 直樹冨士原 彰馬淵 秀明田邊 治之
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1992 年 53 巻 12 号 p. 2904-2907

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抄録

症例は49歳,男性で左大腿部の腫脹と疼痛を主訴とし他院から転送された.発熱は12日前,跛行も9日前からあり,来院時には呼吸障害も来していた.臨床経過と局所所見から本症を疑い,単純レントゲンとCTを行ったところ皮下と筋層内にガス像が見られたため,左大腿部の壊死筋膜切除を行い創は開放とした.しかし,術後,敗血症性ショック,呼吸不全を認め,術後12時間で新たな膿と筋膜壊死が見られたため下肢切断術を行い救命できた.創部の膿培養ではE. faecalisが分離同定できたが,後に緑膿菌, MRSA,真菌と交代した.軟部組織の炎症性病変が進行性で全身症状を伴った場合にはガス壊疽を疑いレントゲン検査を行うことが重要である.ついでクロストリジウム性か非クロストリジウム性かを鑑別し治療方針を決定する.本症例は外傷の既往がなく糖尿病などの基礎疾患のない患者であり,臨床的に極めて興味深いと考えたので文献的考察を加え報告した.

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