1992 年 53 巻 12 号 p. 2892-2897
直腸癌治癒切除後2年以上の経過観察が可能であった159例を対象として,局所再発例の予後,危険因子の検討を非再発例,血行性再発例と比較し,検討した.これより,直腸癌治癒切除後の局所再発は11例(6.9%)に認め,その5年生存率は10.9%と不良であった.局所再発の危険因子として臨床病理学的因子では浸潤型腫瘍形態,リンパ管侵襲陽性およびDNA aneuploid patternがあげられた.手術術式においては直腸切断の有無, awの距離に関係なく,リンパ節郭清の程度と相関していた.一方,血行性再発は24例(15.1%)に認め,その危険因子として,深達度,リンパ節転移,リンパ管侵襲および進行度があげられ,手術術式とは相関していなかった.
したがって,血行性再発の予防には化学療法,放射線療法等の集学的治療が,局所再発の予防には手術によるリンパ節郭清の徹底が肝要と思われた.