1992 年 53 巻 12 号 p. 2908-2911
特発性髄液耳漏はまれな疾患で,これまでに約40例の報告がある.今回われわれは特発性髄液耳漏の1例を経験したので報告する.
症例は37歳の男性.反復する化膿性髄膜炎と髄液耳漏のため, 1989年5月,他院耳鼻科にて,左mastoidectomyを受けた.しかし髄液漏の原因は解明できなかった.その後も髄液耳漏が続くため,患者は1990年1月,当科に入院し,左側頭骨開頭が行われた.硬膜欠損が左中頭蓋窩にみられ,これに一致して骨欠損が左鼓室天蓋部に認められた.この骨欠損部には筋膜および脂肪組織を詰め,硬膜欠損部は筋膜を用いて閉鎖した.術後髄液耳漏は完全に消失した.
反復する化膿性髄膜炎の原因の一つとして,特発性髄液耳漏を考えなければならない.診断には, high resolution CT scanやMRIが非常に有用であった.