日本臨床外科医学会雑誌
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Dyshormonogenetic goiterに合併した増殖性甲状腺腫(wuchernde Struma)の1例
阿部 元沖野 功次迫 裕孝糸島 崇博小玉 正智岡部 英俊
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1992 年 53 巻 12 号 p. 2912-2916

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抄録

Dyshormonogenetic goiterに合併した増殖性甲状腺腫(wuchernde Struma)の1例を報告する.症例は75歳,女性.生下時より甲状腺腫を認め,甲状腺右葉切除術の既往がある.頸部腫瘤の増大と嚥下困難を主訴として来院した.左前頸部に手拳大の腫瘤を触知した.ヨード放出試験よりdyshormonogenetic goiterと診断された.さらに,頸部軟線撮影,超音波, CTによって甲状腺癌の合併を疑い,残存甲状腺全摘術を施行した.摘出腫瘤は15.3×7.6×7.0cm,重量220gの線維性被膜を有する充実性腫瘤で,多数の硬結が存在した.病理組織では,腺腫様甲状腺腫の像を示し,硬結の一部に低分化型濾胞癌の一型である増殖性甲状腺腫を認めた.
Dyshormonogenetic goiterは甲状腺ホルモンの合成障害によって起こる先天性甲状腺腫で,これに合併した甲状腺癌の報告例は,本例を含めてわずか10例であった.

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