日本臨床外科医学会雑誌
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腹部救急手術後の腎不全に合併した上皮小体機能亢進症の1例
片村 宏杉山 貢渡辺 桂一望月 弘彦遠藤 格簾田 康一郎金 正文山本 俊郎
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1992 年 53 巻 12 号 p. 2921-2925

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抄録

56歳,男.急性化膿性胆管炎による敗血症性ショック,急性腎不全で入院した.入院時電解質異常はなかった.術前からCAVHを施行し,第12日に胆嚢摘出術,総胆管切開を施行した.術後も腎不全に対しCAVHを施行したが,第25日頃より血清Ca値が上昇し最高15.2mg/dlとなった.意識レベルは低下し改善しなかった.上皮小体機能亢進症(C-PTH 5.1ng/ml)がありカルチトニン80u/日の投与とwashout therapyを施行し,血清Ca値は低下,意識も改善した.しかしPTHが依然高値で,高Caの症状(不穏状態・筋力低下・口渇・掻痒感)が続いた.副甲状腺腫と診断し,第93病日(術後80日)に腫瘤摘出術を施行した.組織学的にはoxyphil adenomaだった.自験例は透析治療中に腺腫の増生が促進され,明らかとなった原発性上皮小体機能亢進症の1例であった.救急治療の進歩にともない今後腎不全の長期治療例が増すものと思われ,この際副甲状腺機能にも厳重な観察が必要である.

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