日本臨床外科医学会雑誌
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リチウム投与に関連した上皮小体機能亢進症の1手術例
高見 博関根 勝公平 裕人大塚 美幸蓮見 直彦花谷 勇治浅越 辰男小平 進
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1992 年 53 巻 12 号 p. 2917-2920

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抄録

炭酸リチウム(リチウム)は躁鬱病の治療剤であるが,今回本剤により誘発したと考えられる上皮小体機能亢進症の1手術例を経験したので報告する.症例は54歳,女性で, 1980年より躁鬱病のためリチウムを600~1,200mg投与されていた. 1989年に高Ca血症を指摘され, 1990年1月にリチウムによる上皮小体機能亢進症の疑いで,当科を紹介された.血清Caは13.1mg/dl, iPTHは124pg/mlと共に高値を示し,本症の診断で同年4月9日に手術を施行した.上皮小体の腫大は右下のみで,右下上皮小体腫瘤を摘出した.腫瘤の重量は419mgで,組織学的に腺腫であった.術後1年11カ月目の現在,再発を認めていない.本症の病因として,リチウムによる上皮小体細胞からのPTH放出作用が考えられている.リチウムが本症をinductionさせるのであれば組織学的に腫瘤は過形成,また本症をpromotionさせるのであれば腺腫と考えられ,本症の病態生理の解明は合理的な手術方法の選択のためにも重要である.

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