1992 年 53 巻 12 号 p. 2929-2933
患者は42歳女性.初診時リンパ節転移,多発性骨転移があり, T3aN2M1, stage IV.右定型的乳房切除術後,放射線・化学・内分泌療法を反復したが,発症後19カ月で死亡した.組織学的には,乳頭腺管状配列や紡錘形細胞主体の肉腫様所見など多彩な像を示し,その移行像もあり紡錘形細胞化生を伴った乳頭腺管癌と診断された.免疫染色では,肉腫様部分にVimentinが陽性, Keratinは陰性を示した.紡錘細胞癌(いわゆる癌肉腫)の予後は,通常型乳癌と異ならないとされるが,なお議論がある.そこで,当教室における乳癌手術例65例を対象に肉腫様成分の指標としてのVimentin免疫染色所見と予後との関係を検討した.腫瘍の一部にVimentin染色陽性を呈した例が7例あり,これらはKeratin免疫染色性に乏しく,腫瘍の上皮細胞分化度の低下が示された.またそのうち4例に転移・再発を認め, Vimentin陰性例に比べ予後不良の傾向を示した.