1992 年 53 巻 12 号 p. 2934-2937
13年前に右乳癌根治術を受けた59歳の女性が,下肢の麻痺と排尿障害をきたして来院した.最近,上部胸髄横断麻痺が急速に進み,全く歩行ができなくなっていた.画像診断で,第1胸椎に溶骨性変化が,第2第3胸椎には造骨性変化が認められたが,椎骨の変形や圧迫骨折はなかった.脊髄圧迫の解除のために,椎弓切除と第1胸椎から下垂した硬膜外腫瘍の摘出が行われ,組織学的検査によって乳癌の転移が確認された.
手術後に照射,化学療法剤,ホルモン製剤による集学的治療を行ったところ,脊髄横断麻痺は完全に回復した.また,症状の改善に平行して血清腫瘍マーカーが正常化したことから,腫瘍退縮が強く示唆され,病勢のモニターに有用であることが確認された.