日本臨床外科医学会雑誌
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上行結腸に転移をきたした乳癌の1例
田中 邦哉西山 潔小泉 泰裕望月 弘彦長堀 優北川 正明
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1992 年 53 巻 12 号 p. 2938-2943

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抄録

乳癌根治術後8年目に上行結腸へ転移した症例を経験した.患者は55歳の女性で1983年8月11日,左乳癌(T2N1bM0, Stage II)のため定型的乳房切断術を施行した. 1991年7月頃より右下腹部を中心とした鈍痛が出現するようになり, 10月1日イレウスのため緊急開腹術を施行した.術中所見は,上行結腸に径3cmの腫瘤を認め全周性の狭窄を呈していた.
1983年の乳癌組織像は一部充実腺管癌を含む硬癌で,切除標本の病理組織学的検索の結果,腫瘤の組織形態は乳癌組織像に酷似しており,乳癌の転移巣であると診断された.
乳癌の消化管転移が患者生存時に発見されることは稀であり,なかでも結腸・直腸への転移報告は現在までに本邦および諸外国を含めて27例のみであった.転移発症時の平均年齢は56歳であり,術後,転移までの期間は平均約7年であった.転移部位では虫垂が最も多く,組織学的には小葉癌が多かった.

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