日本臨床外科医学会雑誌
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術前超音波検査が有用であった化膿性尿膜管嚢胞穿破による急性腹膜炎の1例
上野 富雄内山 哲史西原 謙二柳生 岳志鶴見 征志村上 卓夫鈴木 敞根木 逸郎
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1992 年 53 巻 12 号 p. 3022-3026

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抄録

化膿性尿膜管嚢胞の腹腔内穿破は稀であり,検索し得た範囲では自験例を含め9例であった.今回その術前超音波検査が有用であった症例を経験したので報告する.症例は41歳男性.初診時,下腹部ほぼ正中に3cm大の有痛性腫瘤を触知するも腹膜刺激症状は認めなかった.腫瘤はCTでは腹腔内か腹壁内かの鑑別が困難であったが,超音波検査では腹直筋直下で腹膜前組織内の尿膜管由来の膿瘍が疑われた.保存的治療で経過観察するも,腹膜刺激症状および熱発発作が現れたため,超音波検査を再度行ったところ,化膿性尿膜管嚢胞の腹腔内穿破による急性腹膜炎が疑われ,緊急手術を施行した.上記診断のごとく化膿性尿膜管嚢胞が腹腔内に穿破しており,尿膜管全摘術を行った.術後は順調に経過し軽快退院した.一般的に化膿性尿膜管嚢胞は抗生剤投与後に一期的に根治手術が施行されることが多いが,この間,超音波を用いて経過観察することは非常に有用であると思われた.

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