日本臨床外科医学会雑誌
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腹壁デスモイドの1例
藤村 隆嶋 裕一沢崎 邦広巴陵 宣彦藤田 秀春岡田 英吉
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1992 年 53 巻 12 号 p. 3033-3037

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抄録

私どもは比較的高齢の女性に発生した腹壁デスモイド腫瘍を経験したので報告する.症例は60歳の女性で右下腹部腫瘤を主訴として来院した.右下腹部に径9×9cmで可動性の乏しい硬い腫瘍が認められた.腹部超音波検査では境界不明瞭で,内部echoが不均一の腫瘤像として描出され,腹部CT検査では周囲の軟部組織よりややhigh densityを示し造影剤で強く増強される腫瘍としてとらえられた.全身麻酔下に手術を施行した.右腹直筋内に境界不明瞭な腫瘍が存在し,腹腔内で大網,横行結腸との間に癒着が認められた.腫瘍より約1cmのsurgical marginを取って切除した.腹壁欠損部はpoly-propylene性mesh (Marlex mesh®)にて再建した.病理組織学的には周囲の筋肉,脂肪を破壊して浸潤性に増殖する線維性組織がみられたが,細胞異型は認められず腹壁デスモイドと診断された.手術後1年8カ月後の現在も再発の徴候なく通院中である.

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