抄録
大腸多発癌症例30例について臨床病理学的に検討した.
大腸多発癌症例は30例(同時性25例,異時性5例)で大腸癌手術症例625例の4.8%,切除症例587例の5.1%を占めていた.占居部位は同時性多発癌では第1癌は直腸, S状結腸,異時性多発癌では第1癌はS状結腸,第2癌は上行結腸に多くみられた.壁深達度において同時性多発癌では進行癌+早期癌の組み合わせは64.0%と高率であった.異時性多発癌では全例,進行癌同士の組み合わせであった.腺腫性ポリープの併存は66.7%(同時性60.0%,異時性80.0%)と高率にみられた.癌の家族内発生は53.3%,大腸癌の家族内発生は20.0%に認められた.治癒切除症例25例の5年生存率は同時性多発癌71.6%,異時性多発癌100%で,単発癌の73.1%と比べて遠隔成績は同時性多発癌ではほぼ同様であったが,異時性多発癌では良好であった.以上の成績から,大腸多発癌において同時性多発癌では進行癌の第1癌のみならず,早期癌の頻度の高い第2癌ないし腺腫性ポリープの併存に対する術前の適確な診断,異時性多発癌では第1癌手術後の定期的な厳重な経過観察が重要であると思われた.