抄録
症例は72歳女性で腹痛を主訴として来院,入院時の腹部エコー,胸腹部CTにてDeBakey IIIb型の解離性大動脈瘤と診断された.また,入院時の胸部レントゲン写真で右下肺野に横隔膜に重なって直径約1cmの腫瘤影を認めた.解離性大動脈瘤の治療を優先させることにし,保存的療法を行い, 4カ月後,軽快退院した.発病1年後の胸部レントゲン写真で腫瘤陰影は直径4cmに増大しており,精査にて単発性の脳転移を伴った大細胞癌, T2N0M1と診断された.この時点で解離性大動脈瘤は偽腔が縮小し安定した状態であった.下葉切除, 3週間後に脳転移巣を摘出したが6カ月後,再び脳転移が出現し死亡した.
解離性大動脈瘤と肺癌の合併例の報告は非常に少ない.解離性大動脈瘤は急性期での治療が予後を左右すると言われており,肺癌を合併している場合といえども,急性期はその治療を優先し,慢性期の早い時期に肺癌に対する診断治療を行うべきと考えられた.