日本臨床外科医学会雑誌
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左側腹部激痛にて発症した特発性脾梗塞の1症例
下門 清志小野 栄治若杉 建三松坂 俊光久米 一弘藤永 裕
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キーワード: 脾梗塞, 急性腹症
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1992 年 53 巻 6 号 p. 1424-1428

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抄録
脾梗塞は心疾患や血液疾患などの基礎疾患を有していることが多く,誘因となるべき基礎疾患を伴わないものは希である.われわれは,左側腹部激痛にて発生した特発性脾梗塞の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
症例は, 57歳,男性.主訴は左側腹部痛.初診時,エコーにて脾梗塞を疑い保存的治療をおこなっていたが,疼痛が持続するため入院となった.血管造影にて脾の上部に向かう第一分枝以下が造影されず,脾梗塞と診断した.入院後も疼痛は持続し,第7病日に40℃におよぶ発熱と,増強する痛みのため,抗生剤等により解熱した後脾摘術施行した.摘出した脾臓は腫大なく上部の1/3が灰白色に変色しており境界明瞭な壊死巣を認めた.術後,心疾患,血液疾患,膠原病等に関する精査を行ったが,誘因となりうる基礎疾患を認めなかった.以上より本症例は特発性脾梗塞と診断した.
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