抄録
大網原発腫瘍の報告は少ない.今回,腹腔内出血をきたした,まれな大網原発平滑筋芽細胞腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
症例は43歳,男性.腹痛を主訴に近医受診,その後当院転院となった.当院入院時,腹部全体は膨隆し,上腹部を中心に著明な自発痛,圧痛を認め,小児頭大の腫瘤を触知した.腹部超音波検査,腹部CT検査では,充実性,一部嚢胞性の巨大腫瘤で腹水も見られた.試験的腹腔穿刺にて血性腹水が得られたため腹部腫瘤からの出血と考え,緊急手術を施行した.腹腔内には血性腹水が貯留し,腫瘍は,怒脹血管を伴った大網に被われ,易出血性であった.肉眼的に浸潤,転移巣は見られず,大網とともに腫瘍を摘出した.摘出標本は18×15×7cm大,重量1,150gで,病理組織学的に大網原発平滑筋芽細胞腫と診断された.経過は良好で再発徴候なく健在である.